2015-06-01 20.05.43


世にも奇妙な物語テイストの、ショートショート的な作品をめざしました。
ストーリーは短いですが、その分バリエーションはあるので、何回か遊んでいただければと思います。
エンディングは6パターンあります。
作品内で、審査員が黒い石を置きますので、だれが置いたのか、記録または記憶をお願いします。

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START

頭が重い。
考えがまとまらない。
目にうつるものが、夢の断片のように、安定しない。

「次の方、どうぞ」

進行役の女が、あなたを前へうながす。
少し広めの、会議室。
部屋の四隅は灯りが届いていないのか、靄がかかったように薄暗い。
前方には、長テーブルが置かれ、審査員たちが座っている。

そうだった。
いまはオーディションの最中だった。
長年、売れない役者を続けてきたあなたが、最後と覚悟を決めたオーディション。
あなたにとっての、ラストチャンス。
うつらうつらとは、していられない。

「どうぞ、前へ。それとも、棄権なさいますか?」

進行役の女は、それが親切心からであるとばかりに、一言添える。
あなたは首をふって、審査員たちの前に身を乗り出した。
五人の審査員たちはみな、一様にスーツをまとい、顔に動物の仮面をつけていた。
犬。猫。豚。馬。狐。
仮面は、まるで生きているかのように、精巧に造られている。
あなたが審査員たちに目を奪われていると、進行役の女が説明した。
「最初にもいいましたが、審査をするのは、それぞれの事務所の方たちです。どこの事務所の方はわからないように、審査中は、かぶりもので顔をかくしてもらっています」
そうだった。
そこでまた思い出す。
このオーディションは、複数の芸能事務所による人材の発掘が目的だった。
あなたは、これからあたえられる課題に応えて、いずれかの事務所に、スカウトされねばならないのだ。
そうしなければ、明日はない。1へ

 

 

 


1

 

「終わりだ」

進行役の女が、そう言った。
「最初の課題は、この台詞を表現してもらいます。演じ方は、自由です。その言葉を口に出すシチュエーションを自ら想像し、台詞を言って下さい」

進行役の女は退いて、部屋の影に隠れる。
動物の仮面をつけた審査員たちの視線が、あなたひとりに集中している。

さて、あなたはこの台詞を、どのように演じよう?

恋人への別れの言葉として4へ
計画が失敗した敗者として26へ
とどめの一撃を加える正義の味方として32へ
人生に絶望し、自殺を決意した言葉として49へ

 

 

 

 

 

2

「残念でした」
進行役の女が、あなたの退場をうながす。
あなたは、もう一度チャンスをくれ、と彼女に懇願する。
しかし、進行役の女は、あなたの声には、耳を貸さない。
「次の方、前へ」
彼女は、自分の仕事に徹しているようだ。
それでもあなたが居座ろうとすると、黒い影が近づいて、あなたをからめとった。
意識が朦朧とする。
影はあなたの全身を覆い、どこかへと連れ去った。

気がつくと、無限とも思える行列の最後方に、あなたは並んでいた。
あたりは、薄暗く、寒かった。
頭が重い。
考えがまとまらない。
目にうつるものが、夢の断片のように、安定しない。
なぜだか、この行列の最前線に、最後の希望があるような気がした。
すべてを忘れていたが、それだけは確信できた。
あなたは、その希望を信じて、永遠とも思われる無限の時間を、ただ並んで、待った。

LOOP END

 

 

 

 

 

3

父の孤独が、心に浮かぶ。
親友の挫折に、後悔を感じる。
恋人の不安から目をそらしていた。
そんな気持ちで、歌を歌った。

 ぬけだせない めいろにまよい
 わめき なき たそがれて
 ぜつぼうのひびに
 うそだとさけぶ REAL HEART

歌はサビへ突入する。
このままやさしく歌う36へ
最後は激しく歌う30へ

 

 

 

 

4

「終わりだ」

あなたは、目の前に立っている女性に、そう告げた。
晴香という名前だった。
大学のころから付き合っていたが、結婚を望む彼女に、あなたの方から別れを告げた。
「どうして?」
晴香は言った。
あなたは答えなかった。
ただ感情を押し殺して、低くつぶやいた。
「もう、俺たちは終わりなんだ」
目の前の景色が滲む。

「すばらしい」
狐の仮面をつけた審査員があなたの演技に拍手を送った。
「言葉の奥に秘めた、哀しみをみごとに表現している」
「そうか」
馬の審査員は、その意見に不満そうだ。
馬の審査員は自分の目の前に石を置いた。
黒い石だ。

「あなたにとって、愛とは何ですか?」
犬の審査員が聞いてきた。
「演技で表現しているのに、質問は蛇足だよ」
猫の審査員がそう言ったが、犬の審査員は聞いておきたいと、あなたの答えを待った。

「愛とは……」
あなたは答えなくてはならない。

「たとえ結ばれなくとも、お互いの幸せを望むものだ」19へ
「情熱にまかせた熱病のようなものだ」52へ
「幻想だ。そんなもの、実際には存在しない」15へ

 

 

 

 

 

5

「はい」
狐の審査員は大仰に首をふった。
そして、目の前に黒い石を置いた。
「せっかくの興味が薄れてしまったよ」
「おれは、その意見を推す。やっかいかどうかはまたべつだがな」
馬の審査員だけは、同意してくれたようだ。
「どうでもいいことさ、家族より本人だろう?」
猫の審査員が、進行役の女をうながした。

進行役の女は、すました表情で前に出てくる。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

6

「ふう」
あなたの答えに、審査員たちから悲喜の混じった息がもれた。
豚の審査員は気がすんだように、手を下げて、自分の前に黒い石を置いた。
「おれもかな」
少し悩んだあとで、猫の審査員も、黒い石を置いた。

進行役の女が前に出てきた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

7

馬の審査員は、避けもしなかった。
横回転をかけたおもちゃの剣は、まっすぐに飛ばず、弧を描いて審査席にまで飛んだ。
「うごっ!?」
そして、みごとに豚の審査員の顔面をとらえた。

「だ、だいじょうぶかね?」
狐の審査員が心配そうに、豚の審査員をのぞきこむ。
仮面の下からでも、豚の審査員の怒りが伝わってきた。
豚の審査員は、無言で、席の上に黒い石を置いた。
猫の審査員は、笑いをこらえている。

あなたが、審査員席の方に、気を向けていると、突然、雷が落ちたかのような痛みが走った。
目にも止まらぬ、一瞬のことだった。
馬の審査員の剣が、あなたの紙風船を割ったようだ。
しかも手加減なし。
あなたはうずくまり、痛みに気が遠くなりそうになる。
「しょ、勝負あり!」
進行役の女があなたにかけより、大丈夫ですか?と声をかける。
「すまない。手が抜けない性質なのだ」
馬の審査員は、そう言って、黒い石を置いた。

あなたが回復するのを待って、進行役の女は告げた。
「これで、あなたの審査はすべて終了です」

35へ

 

 

 

 

 

8

さて、ここであなたは、審査席に置かれた黒い石の状況を確認する必要があります。
黒い石は、審査員たちの不合格の意思表示です。
つまり、黒い石を置いていない審査員がいれば、あなたはその審査員から合格を受けたことになります。
もし複数の審査員から合格を受けていれば、その中から、これだと思う一つを選んで下さい。

さて、あなたを採用されるのは……
犬の審査員46へ
猫の審査員47へ
豚の審査員62へ
馬の審査員57へ
狐の審査員61へ
残念ながら、すべての審査員から不合格となっていれば2へ

 

 

 

 

 

9

猫の審査員は、座席を軽く飛び越えて、前に出た。
そのジャンプ力があまりに高かったので、あなたは驚いた。
天井に頭をぶつけそうな勢いだ。
進行役の女が、あなたたちの頭に紙風船をとりつけ、おもちゃの剣をわたした。
「お互い、楽しもうじゃないか」
猫の審査員は、剣先をぺろりと舐めるような仕草をして、そう言った。

進行役の女が、ホイッスルを鳴らした。
試合開始だ。

猫の審査員は、ぴょんぴょんと軽いフットワークで跳ねながら、あなたの出方を待っている。
頭をたたきにいく60へ
足元を狙ってみる22へ
こちらも相手の出方をうかがう63へ

 

 

 

 

 

10

「ひとつのことに集中したい」
あなたの答えに、猫の審査員はひげをいじるのやめ、かわりに目の前に黒い石を置いた。
「興味ぶかい答えですなあ」
また、場をとりつくろうように、狐の審査員が、そう言った。

進行役の女が前に出てきた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

11

あなたは、曲の主張をしっかりと伝えようと、朗々と歌う。

 せいめいはふしぎ だれもおなじではない
 よのなかのあくいは きえてなくなればいいのに
 じんせいはふしぎ だれのおなじではない
 わすれていても きっとかこは 
 わたしをしはいしようとする

演奏が終わった。
歌い終わると、部屋の中は静まりかえった。
審査員たちからぽつぽつと拍手が贈られた。
「湿った歌だな。だが聴きどころも多かった」
馬の審査員は満足してくれたようだ。
「良かったのは最後だけだ。音楽はもっと陽気がな方がいい」
猫の審査員はそう言って、黒い石を置いた。
「わたしもです」
狐の審査員も、続けて黒い石を置いた。

進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

12

「家族とは、遺伝子を受け継ぐやっかいなものだ」
あなたの答えが、犬の審査員はさらに気に入らなかったようで、顔を手で覆った。
「つまらない人生観だ」
さきほど褒めたはずの豚の審査員も、残念そうに首をひねり、目の前に黒い石を置いた。
「しかしそれが真理だ」
馬の審査員は肯定的だった。
狐の審査員は続けて質問してきた。
「きみは、その遺伝子から逃れられないと思っているのかな?」

「はい」5へ
「いいえ」20へ

 

 

 

 

 

13

「ああ」
あなたの答えに、審査員たちから悲喜の混じった息がもれた。
豚の審査員は気がすんだように、手を下げて、自分の前に黒い石を置いた。

進行役の女が前に出てきた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」

53へ

 

 

 

 

14

あなたは、一度声量を落とし、ささやくように唄う。
よぎった過去の記憶に、身を寄せるように、しっとりと。 

 きづけば すぎしひは
 こうかい ばかりだが
 あなたの ぬくもりが
 わたしを つなぐREAL HEART

歌はサビへ突入する。
このままやさしく歌う29へ
最後は激しく歌う30へ

 

 

 

 

 

15

「幻想だ。そんなもの、実際には存在しない」
あなたの答えに、みなが沈黙してしまった。
犬の審査員、狐の審査員が、それぞれ目の前に、黒い石を置いた。
あなたが、この答えはまずかったかと思いながら、その場で待っていると、
「まあ、そういう考えが、悪いわけじゃない」
「甘い考えよりはましだろう」
猫の審査員と、馬の審査員はフォローをいれるように、言葉をつないだ。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきている。

「ちょっと、待ってくれ」
豚の審査員が手を上げた。
「きみに質問だが」
その声は、そのやけに甲高い
「きみの人生はこれまで、愛に恵まれていたかね?」
あなたは、演技の審査にそのような質問は必要だろうかと思ったが、進行役の女も審査員たちも、その答えが重要な問題とでもいうかのように、押し黙っている。

「愛に恵まれていた」と答える25へ
「恵まれていなかった」と答える13へ

 

 

 

 

 

16

犬の審査員が、立ち上がり、前に進み出た。
進行役の女が、紙風船をふたりの頭にとりつけ、おもちゃの剣をわたした。
「遠慮はいらないぞ。正々堂々と勝負だ!」
犬の審査員は剣先をあなたに向けて、そう言った。

進行役の女が、ホイッスルを鳴らした。
試合開始だ。

犬の審査員は、ホイッスルと同時に突進してきた!
負けじと前にすすみ、紙風船をねらう38へ
横に回って、受け流す64へ
下がって、受け流す42へ

 

 

 

 

 

17

「申し訳ない。体力には自信がない。わたしが相手をしても、審査のしようがないでしょう」
狐の審査員は、あせった様子で、試合の相手を断った。
「その代わり、わたしの審査基準を教えよう」
狐の審査員は、落ち着いた声で伝えた。
「わたしは、臨機応変な対応ができるかをみたいと思っている。単調ではなく、いかに考えているかを注目したい」
進行役の女が、申し訳なさそうにあなたを振り返る。
「こう言っておられます。他の方にしてもらえますか?」

あなたは、相手を選びなおさなくてはならない。
犬の審査員16へ
豚の審査員43へ
猫の審査員9へ
馬の審査員51へ

 

 

 

 

 

18

あなたは、ぎたーのシャッフルをリズミカルに奏でる。

 そらを みあげてみる
 ぎらぎらと たいようがおこっている
 うみに かぜがはしる
 せかいは いきているとわめいている。

歌はサビへ突入する。
ここからやさしく歌う11へ
最後は激しく歌う59へ

 

 

 

 

 

19

「愛とは、たとえ結ばれなくともお互いの幸せを望むものだ」
あなたの答えに、犬の審査員は満足そうにうなずいた。
「くだらない」
そう言って、猫の審査員は、審査席の自分の目の前に石を置いた。
黒い石だ。
それにならうように、馬の審査員も自分の目の前に、もう一個黒い石を置いた。
「わたしは興味深いですなあ」
狐の審査員はあごに手をあて、考え込んでいる。
表情はわからないが、楽しそうだ。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきている。

「ちょっと、待ってくれ」
豚の審査員が手を上げた。
「きみに質問だが」
その声は、そのやけに甲高い
「きみの人生はこれまで、愛に恵まれていたかね?」
あなたは、演技の審査にそのような質問は必要だろうかと思ったが、進行役の女も審査員たちも、その答えが重要な問題とでもいうかのように、押し黙っている。

「愛に恵まれていた」と答える25へ
「恵まれていなかった」と答える13へ

 

 

 

 

 

20

「いいえ」
あなたの答えに、狐の審査員はうなずいた。
「それはそうだ。遺伝子に能力が左右されてはたまらない」
豚の審査員が同意した。
そして、意見をひるがえしたのか、さきほど置いた黒い石を目の前から引っ込めた。
「いや、遺伝子の要素も大事だろう。かれとは意見が合わないようだ」
そう言って、馬の審査員が黒い石を置いた。
「どうでもいいことさ、家族より本人だろう?」
猫の審査員が、進行役の女をうながした。

進行役の女は、すました表情で前に出てくる。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

21

「いいえ」
「ええ~!」
あなたの答えに、一番反応したのは、質問した馬の審査員ではなく、犬の審査員だった。
「本当かよ~」
さきほど立ち上がって喜んだのはどこへやらの落胆ぶりである。
犬の審査員は、目の前に黒い石を置いた。
「正義ねえ」
猫の審査員は、この質問にはそれほど興味がなかったようだ。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきている。

「ひとつ聞きたい」
猫の審査員がひげをいじりながら、質問を投げかける。
「きみは、ひとつのことを集中して、実行したいか? それともいろいろなことにチャレンジして、自分の幅を広げたいか?」
どのような、演技をしていきたいか、ということだろうか?

「ひとつのことに集中したい」10へ
「チャレンジして、自分の幅を広げたい」45へ

 

 

 

 

 

22

あなたは、ぴょんぴょん跳ねている、猫の審査員の足元を攻撃してみた。
「いやいや、これは紙風船をたたく試合だって」
猫の審査員は、余裕を持って、かるがるとあなたの攻撃をかわす。
それでもあなたはかまわずに、足元を中心に攻撃を仕掛けてみた。
猫の審査員の動きは俊敏で、とても当たりそうにない。
「ばかじゃないの? ぼくは、もう何回もきみの風船をこわせたよ」
猫の審査員は、勝ち誇った声で、高く飛び上がる。

「勝負あり!」
猫の審査員が着地をすると、進行役の女がホイッスルを鳴らした。
「え?」
と、驚く猫の審査員は、自分の頭を触る。

「ほう」
興味深そうに、犬の審査員が唸る。
「なにが? どうなった?」
「ジャンプしたとき、あたまの紙風船が天井に触れて、ぺちゃんこになりましたなあ」
狐の審査員が豚の審査員に説明する。
「意図的にしたのならば、たいしたものだ」
馬の審査員はあなたの表情をうかがっている。
猫の審査員はがっかりした足取りで自分の席へと戻っていった。

「これで、あなたの審査はすべて終了です」
進行役の女が前に出た。35へ

 

 

 

 

 

23

 

あなたは、自分の不安や緊張をかき消すように、力強く歌った。

 くもを きりさいて
 ほしを せにあびて
 あさを ただめざし
 よるを およぎゆく

歌いながら、心に人生の断片がよぎっていった。
幼いころの両親やともだちの面影だ。

 あのひの やくそくは
 にもつの かたすみで
 いつか ひらかれる
 そのひ をまっている

脳裏に、無邪気な自分の映像がよみがえった。
両親に可愛がられ、ともだちと夕方まで、泥まみれで遊んでいる。
歌は、Bメロに入る。

そのまま力強く歌う55へ
ここで優しく歌う14へ

 

 

 

 

 

24

背中に目がついているかのように、馬の審査員はあなたの一撃をよけた。

「おしい」
「いいアイデアだったがなあ」
狐の審査員と、猫の審査員の声か聞こえた。
「でも、剣を捨てたら、勝負は終わりだぞ」

あなたが、審査員席の方に、気を向けていると、突然、雷が落ちたかのような痛みが走った。
目にも止まらぬ、一瞬のことだった。
馬の審査員の剣が、あなたの紙風船を割ったようだ。
しかも手加減なし。
あなたはうずくまり、痛みに気が遠くなりそうになる。
「しょ、勝負あり!」
進行役の女があなたにかけより、大丈夫ですか?と声をかける。
「すまない。手が抜けない性質なのだ」
馬の審査員は、そう言って、黒い石を置いた。

あなたが回復するのを待って、進行役の女は告げた。
「これで、あなたの審査はすべて終了です」35へ

 

 

 

 

 

25

「おお」
あなたの答えに、審査員たちから悲喜の混じった息がもれた。
豚の審査員は気がすんだように、手を下げた。

進行役の女がふたたび前に出てきた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

26

「終わりだ」

暴落していく為替レートを見て、うなだれる父がいた。
子供心に、父が、とても理不尽なしっぺ返しを受けていることを悟った。
顔は死神に魅入られたように青ざめ、数年後、本当に大病を患って、亡くなった。
脱サラして、個人輸入業をはじめた父も、最初のうちはうまくいっていた。
しかし、成功から生まれた傲慢さは、いつしか、父から人としての誇りを奪っていった。
母が、家を出て行ってから、歯車が狂い始めた。
あの日、資産をすべて失い、破産に追い込まれた父の背中を、幼いあなたは見ていた。
そのときの父にのり移ったのかように、口から自然と言葉がこぼれた。
「もう、終わりだ、すべて……何もかも」
音をたてずに、視界が崩れていく。

「すばらしいね」
豚の審査員が、あなたを褒める。
その声は甲高く、耳になじまない。
「人生の深みを感じる、すばらしい言葉だった」
「そうか?」
猫の審査員が、首をひねる。
「ぼくはダメだな。ちょっと、ひいてしまったよ」
犬の審査員はそう言って、自分の目の前に石を置いた。
黒い石だ。
「興味本位で聞きたいのだが」
狐の審査員があなたに聞いてくる。
「あなたにとって、家族とはどういうものだろう?」
それがいまの演技とどういうつながりがあるのかわからなかったが、審査員たちは押し黙って、あなたの答えを待った。

「家族とは……」
あなたは答えなくてはならない。

「心が落ち着くことのできる温かいものだ」34へ
「遺伝子を受け継ぐやっかいなものだ」12へ

 

 

 

 

 

27

あなたはもう一度、動き回り、馬の審査員のうしろを取りにいった。
こうなったら、いちかばちかだが、剣を投げつけてみるしかない。
動きつつ、うしろをとったときならば、チャンスがありそうだ。
外れてしまえば、もう負けとたと同じだが、他に方法は考えられそうになかった。
あなたは、うしろに回り込みながら、紙風船めがけて、おもちゃの剣を投げつける!

回転をかけずに、直線的に投げる24へ
縦回転で投げる50へ
横回転で投げる7へ

 

 

 

 

 

28

あなたは、馬の審査員の動きを待った。
馬の審査員は、微動だにしない。
あなたが仕掛ける瞬間は、まったく見当たらない。

「たいくつだなあ」
猫の審査員は、そう言って、黒い石を置いた。
「わたしもだなあ」
豚の審査員も同意して、黒い石を置いた。
「そうか? 緊張感があって、いいじゃないか」
犬の審査員は状況を楽しめているようだ。

あなたが、審査員席の方に、気を向けていると、突然、雷が落ちたかのような痛みが走った。
目にも止まらぬ、一瞬のことだった。
馬の審査員の剣が、あなたの紙風船を割ったようだ。
しかも手加減なし。
あなたはうずくまり、痛みに気が遠くなりそうになる。
「しょ、勝負あり!」
進行役の女があなたにかけより、大丈夫ですか?と声をかける。
「すまない。手が抜けない性質なのだ」
馬の審査員は、そう言って、黒い石を置いた。

あなたが回復するのを待って、進行役の女は告げた。
「これで、あなたの審査はすべて終了です」35へ

 

 

 

 

 

29

アルペジオでやさしい伴奏をつけながら、しっとりと歌った。

 いつか すべてをやりおえたら 
 てんごくのどあを ひらこう
 よぞらのつきのどあのぶを
 みつけたら まよわず なかへ

演奏が終わった。
歌い終わると、部屋の中は静まりかえった。
審査員たちからぽつぽつと拍手が贈られた。
「湿った歌だが、味わいがある」
馬の審査員が、一番聞き入ってくれたようだ。
腕組みをして、うつむき、まだ余韻にひたっているようだ。
「陰気だ。音楽はもっと陽気がいい」
猫の審査員はそう言って、黒い石を置いた。
「ぼくもだな」
犬の審査員も、続けて黒い石を置いた。

進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

30

サビに入ってから、ギターをダイナミックに奏でた。

 いしは わがむねに
 こころのやいばを といで
 あいを うしなっても
 ここで あゆみはとめない
 
演奏が終わった。
歌い終わると、部屋の中は静まりかえった。
審査員たちからぽつぽつと拍手が贈られた。
「メリハリがあってなかなか楽しめた」
豚の審査員は、満足げだ。
「まあ、よかったよな?」
「ああ。まあ、よかった」
猫の審査員の言葉に、犬の審査員がうなずいた。
馬の審査員と狐の審査員も、褒めずけなさずといったところのようだ。

進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

31

あなたは、紙風船を叩き割った。
「勝負あり!」
進行役の女がホイッスルを鳴らす。

犬の審査員はしぶしぶ自分の席へ戻る。
「あれ~、おっかしいなあ」
「油断したからだろう」
馬の審査員は、まるで犬の審査員の師匠でもあるかのような口調で言った。
「なかなか、よかったね」
「みごとでした」
「楽しめた」
ほかの審査員にも好評のようだった。

進行役の女が前に出てきた。
「これで、あなたの審査はすべて終了しました」35へ

 

 

 

 

 

32

「終わりだ」

あなたには、勇輝という名の幼馴染がいた。
いつもヒーローごっこをして、近所の公園で遊んでいた。
たいていの場合、勇輝がヒーロー役で、あなたが悪者を演じた。
思えば、あのときの思い出が、役者を目指すきっかけになったのかもしれない。
中学からは別々の学校へ通うようになり、しだいに二人は疎遠になっていった。
あれはたしか、中学三年生のときだ。
あなたは、勇輝のよくない噂を耳にした。
しばらく会わないうちに、勇輝は変わってしまったらしい。
あなたは、勇輝に会いにいった。
家にはいなかった。
かれの母親は、疲れた顔をして、息子の居場所を教えてくれた。
そして、ゲームセンターにいた彼を見て、愕然とした。
勇輝は髪を赤く染め、平然と喫煙をし、気弱そうな下級生から、金を巻き上げていた。
怒りがこみ上げた。
裏切られて様な気がして、あなたは殴りかかった。
「これで、終わりだ!」
ヒーローと悪者が逆転した。
友情も、それっきり壊れてしまった。
思い出が、濡れた絵の具のように、溶けていく。

「いいねえ!」
犬の審査員が喜んで、立ち上がり、拍手した。
「感情がこもってすばらしい!」
「そうですか? 感情に流されすぎのようにもみえますが」
狐の審査員は関心を失ったように頬づえをついて、目の前に石を置いた。
黒い石だ。
「まあ、でも期待感はあるよ」
豚の審査員が甲高い声で言った。
「どっちともいえない」
猫の審査員は判断がつなかいようだ。

「お前は、正義のためなら」
馬の審査員が、腕組みをしたまま、質問した。
「お前は正義のためなら、力ずくでもかまわないと思うか?」
犬の審査員が、驚いたように馬の審査員を見た。
あなたは、演技の審査にそのような質問は必要だろうかと思ったが、他の審査員たちも、その答えが重要な問題とでもいうかのように、あなたの答えを待っている。

「はい」39へ
「いいえ」21へ

 

 

 

 

 

33

「ほお」
あなたの答えに、審査員たちから悲喜の混じった息がもれた。
豚の審査員は気がすんだように、手を下げた。

進行役の女が前に出できた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

34

「家族とは、心が落ち着くことのできる温かいものだ」
あなたの答えに、落胆していた犬の審査員が、首をあげて反応した。
「おお、そうなのか? それならばもう少し様子を見てみよう」
犬の審査員は、置いてあった黒い石を引っ込めた。
代わりに、猫の審査員と馬の審査員が、それぞれ黒い石を置いた。
「なるほどねえ」
質問をした狐の審査員は、あごに手をあてて一人うなずいてる。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきていた。

「ちょっと、待ってくれ」
豚の審査員が手を上げた。
「きみに質問だが」
その声は、そのやけに甲高い
「きみの人生はこれまで、愛に恵まれていたかね?」
あなたは、演技の審査にそのような質問は必要だろうかと思ったが、進行役の女も審査員たちも、その答えが重要な問題とでもいうかのように、押し黙っている。

「愛に恵まれていた」と答える25へ
「恵まれていなかった」と答える13へ

 

 

 

 

 

35

「以上の審査結果もとに、あなたを採用するかどうか、各事務所の方々が判断をします」
あなたは、進行役の女の話を聞きながら、あれっと思った。
「さて、ここであらためて、説明をしておきます」
あなたは、この女性に以前にも会っているような気がした。
つい最近の気もするし、遠い昔だったような気もする。
しかし、思い出すことはできない。
「うしろをご覧ください」
言われるまま、あなたは振り向いた。
うしろには、あなたと同じような顔色をした人々が、列をなして並んでいる。
その行列は、無限の長さだ。
ここは、広めの会議室などではなかった。 

「みな、自殺を図り、行き場を失った魂たちです」

進行役の女は、さも、あなたの不幸をあわれむように、哀しげな表情をつくる。
「あなたも、その一人です」
指差されて、あなたは、そうだったことを思い出す。
美しい、月夜だった。
「自ら命を絶った魂は、天国に行くことを許されません。といって、現世をあてもなく、さまよわせるわけもいきません。そこで、この審査の場があるのです」
そうだった。
その説明は、もう受けているはずだった。
しかし、この無限とも思われる行列に並んでいるあいだに、あなたは忘れてしまったのだ。
役者になる夢は、もうとっくに絶たれていたのだ。
むしろそれを苦に、首を吊った。
そしてこれは、そのあとの魂の行き場を決めるための、審査だった。
動物の仮面をかぶった審査員たちが、どこの何者なのかはわからない。
しかし、どこに採用されようが得体のしれないのはたしかだった。
「もし、どこの事務所の手もあがらなければ、あなたはふたたび、この行列の最後に並び、次の審査を待たなければなりません」
それも嫌だった。
自分の順番がくるまで無限に待つことなど、できない。
消えてしまった方がましだ。

審査席の様子をうかがった進行役の女が、あなたを振り向いた。
「審査の結果が出たようです」
その顔には、とびきりの笑顔を浮かんでいる。
「手を上げてくれる事務所があるといいですね!」
8へ

 

 

 

 

 

36

静かなアルペジオに、声を添える。
曲は、静かに終幕をむかえる。

 さよなら それがこたえ
 なぜなら いまのこたえ
 いつかは かえってこよう
 わらって いれるのなら

演奏が終わった。
歌い終わると、部屋の中は静まりかえった。
審査員たちからぽつぽつと拍手が贈られた。
「暗鬱な曲だが、きらいではない」
馬の審査員が発言した。
他の審査員たちは、みな無言だった。
あまり、この曲は好みでないようだ。
猫の審査員が黒い石を置くと、それに習って、犬の審査員、豚の審査員、狐の審査員も、それぞれ黒い石を置いた。

進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

37

あなたが前へ動くと、馬の審査員は、すうと、おもちゃの剣を前へ突き立てた。
ゆったりと、件を指先でつまんでいるだけなのに、すごい威圧感だ。
あなたは、立ち止まり、それどころか後ずさりをせざるをえなかった。
馬の審査員には、武道の達人のような貫禄がある。

じっと待って、スキができるのを待つ28へ
動き回って、スキができるように仕掛ける54へ

 

 

 

 

 

38

あなたも犬の審査員の紙風船めがけて前へすすんだ。
しかし、犬の審査員の速攻にはおよばなかった。
あなたの剣は空を切り、犬の審査員はすばやく横を通り過ぎていく。
ホイッスルが鳴った。
「勝負あり!」
頭に触れると、紙風船はぺちゃんこになっていた。

「あっけないね」
「そうだね、見ごたえがない。楽しくない」
豚の審査員と猫の審査員が、黒い石を置いた。
「いや~、弱い、弱すぎるよ」
犬の審査員も自分の席にもどると、黒い石を取り出し、置いた。

あなたは呆然と立ちつくす。

「これで、あなたの審査はすべて終了です」
進行役の女が言った。35へ

 

 

 

 

 

39

「はい」
あなたの答えに、犬の審査員はふたたび立ち上がって、拍手をした。
「いいよ、いいねえ!」
そんな犬の審査員に対して、馬の審査員は、
「フン!」
と鼻を鳴らした。
そして、目の前に黒い石を置いた。
狐の審査員もあまり良い表情にはみえない。
「正義ねえ」
猫の審査員は、この質問にはそれほど興味がなかったようだ。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきている。

「ちょっと待ってくれ」
豚の審査員が手を上げた。
「きみに質問だが」
その声は、そのやけに甲高い
「きみの人生はこれまで、波乱に満ちていたかね?」

「波乱に満ちていた」33へ
「それほどでも」6へ

 

 

 

 

 

40

ギターのシャッフルをダイナミックに奏でる。

 じだいが おおきく うごいても
 かわらぬ ひとの おもいもある
 いのちが きえてしまっても
 のこした こころのたね のこす

演奏が終わった。
歌い終わると、部屋が演奏の余韻で静まりかえった。
審査員たちからぽつぽつと拍手が贈られた。
「じつに壮大だった」
豚の審査員は満足げにうなづいた。
「そうか? ちょっとわざとらしい歌詞に感じたが」
猫の審査員はそう言って、黒い石を置いた。

進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

41

あなたが様子を見ていると、犬の審査員は首をふって体勢をたてなおし、ふたたび突進してきた。
負けじと突進する38へ
横に回って、受け流す64へ
下がって、受け流す42へ

 

 

 

 

 

42
下がって、突進をかわそうとしたが、犬の審査員の飛び込みは思ったより深く、あなたは流しきれなかった。
後ろにおしりから、たおれてしまう。
「勝負あったな」
犬の審査員はあなたの頭の上を、ぽんと軽くたたく。
振り向いて座席に帰っていく、犬の審査員のおしりに売れしそうに揺れる尻尾がみえた。

「あっけないね」
「そうだね、見ごたえがない。楽しくない」
豚の審査員と猫の審査員が、黒い石を置いた。
「いや~、弱い、弱すぎるよ」
犬の審査員も自分の席にもどると、黒い石を取り出し、置いた。

あなたはその場に立ち上がる。

「これで、あなたの審査はすべて終了です」
進行役の女が言った。35へ

 

 

 

 

 

43

「いやいや、わたしはやらない。絶対にしない」
豚の審査員は、断固拒否の姿勢だ。
「やらないかわりに、わたしの審査の基準をおしえてやる」
豚の審査員は甲高い声で言った。
「わたしの審査基準は、いかにこれまで良い人生を歩んできたか? だ。豊なプロセスを期待する」
進行役の女が、申し訳なさそうにあなたを振り返る。
「こう言っておられます。他の方にしてもらえますか?」

あなたは、相手を選びなおさなくてはならない。
犬の審査員16へ
猫の審査員9へ
馬の審査員51へ
狐の審査員17へ

 

 

 

 

44

 

「最後は、アクションの審査をしたいと思います」

進行役の女は、紙風船と、おもちゃの剣を持ってきた。
紙風船は、ゴムで留められるようになっており、進行役の女は、それを自分の頭にとりつけ、おもちゃの剣を両手で振った。
「こうやって、頭にとりつけた紙風船を、この剣で、たたき割ってもらいます。相手をするのは……」
そう言って、審査席を見まわした。
「わ、わたしはごめんだぞ」
豚の審査員が手をふって、拒否を示す。
「わたしも疲れたくはない」
狐の審査員も乗り気ではない。
「わくわくするな」
「楽しそうだな」
犬の審査員と、猫の審査員はやりたい様子だ。
馬の審査員は、どちらでもいった風で、黙っている。
「では、あなたに選んでもらいましょう。審査員の中から、試合をする相手を選んでください」

さて、だれと紙風船たたきをしよう?
犬の審査員16へ
猫の審査員9へ
豚の審査員43へ
馬の審査員51へ
狐の審査員17へ

 

 

 

 

 

 

45

「チャレンジして、自分の幅を広げたい」
あなたの答えに、猫の審査員は、満足したように、ひげをなで続ける。
「あなたのところでは、チャレンジ精神は不要なのでは?」
狐の審査員がそう言うと、
「そうだな」
といって、馬の審査員は、自分の目の前に、もう1個黒い石を置いた。

進行役の女が前に出てきた。
「それでは、次の課題にまいりましょう」53へ

 

 

 

 

 

 

46

あなたは、別室へ通された。
「よく来た」
審査員の控え室だった。
机の上に、犬のかぶりものが置かれ、窓際にスーツがかけられている。

部屋の中央に、青いマントとマスクをかぶった、コスチュームの男がいた。
「おれの名前は、スカイマント」
犬の審査員だった男は、自己紹介を始めた。
かれは、世界中で起こる災害や事件を、秘密裏に解決しているのだという。
つまり悪と戦う超人、俗にいうヒーローだ。
しかし、ひとりでの戦いにも限界がある。
そこで、死んだ魂の中から、勇敢なもの、正義感にあふれたものを探して、力になってもらっているのだ。
身分もすべて変わるが、あなたは、ふたたび肉体をもって、生き返るそうだ。
「いま、世界にかつてない危機が訪れようとしている」
スカイマントの視線はまっすぐで、信頼にたるものだった。
「そのために、一度死んだその命を、おれにあずからせてもらえないか?」
あなたは、二つ返事で快諾した。
「よかった!」
あなたたちは、固い握手をかわす。
「それでは、さっそくだが、南極で船が座礁しているらしい。すぐに向かって、救助を行うぞ!」
青いマントがひるがえり、スカイマントとあなたは、颯爽と部屋をあとにした。
そして、あなたは、スカイマントといっしょに、正義の使命とともに生きることとなる。

DOG END

 

 

 

 

 

 

47

あなたは、別室へ通された。
「おお、きたな」
審査員の控え室だった。
机の上に、猫のかぶりものが転がり、床にしわくちゃのスーツが脱ぎ捨てられている。

部屋には、ひげ面の中年男がいた。
猫の審査員だった男は、葉巻をくわえ、スコープのようなもので、古書をみている。
「トレジャーハンターのスティーブだ」
スティーブは、あなたの方は見ずに説明を始めた。
かれは世界に眠る財宝や謎を集め、蒐集する冒険家だそうだ。
その過程で、人であらざる世界にも足を踏み入れ、こうやって審査の場にも来るようになったという。
「ぼくが、きみに求めるのは、人の立ち入れない地域や秘境に入って、情報を持ち帰ってもらうことだ」
スティーブは常人とはかけはなれた体力を持ってはいるが、それでも生身の人間だった。
傷を負えば痛いし、致命傷を受ければ死んでしまう。
そこで、肉体のない、魂だけの存在あるあなたを使役して、危険な場所を代わりに探索させたいのだ。
「好奇心や探究心がありそうな気がしたんだ」
そこではじめて、スティーブはスコープから目を離し、あなたに顔を向けた。
「期待しているぜ」
あごひげに覆われた笑顔は歳のわりにチャーミングだった。
「ぼくも音楽は好きなんだ。まあ、楽しくやろう」

そうして、その後のあなたは、トレジャーハンターに使える身として、危なくも喜びに満ちた、冒険の日々に明け暮れくことになった。

CAT END

 

 

 

 

 

48

「もう、つまらないなあ」
猫の審査員の俊敏さは、文字通り、目にも止まらぬ速さだった。
ふたたびいつのまにか背後を取られ、あなたの紙風船は叩き割られた。
「勝負あり」
進行役の女がホイッスルを鳴らした。

猫の審査員は、自分の座席にすわるなり、黒い石を置いた。
「もっと工夫してほしいなあ」
狐の審査員は、頬づえをして、黒い石を置いた。
「たしかに」
豚の審査員も、同意してうなづき、黒い石を置いた。
「まあ、前に出るのは勇敢なことではあるよ」
犬の審査員は、かばうような口調だった。

「これで、あなたの審査はすべて終了です」
進行役の女が前に出た。35へ

 

 

 

 

 

49

「終わりだ」

あなたは、せまい安アパートに、ひとり正座していた。
だれに向けたわけでもない、遺書を書いた。
両親や恋人や親友といえるものの、近くには居ない。
才能に限界を感じた。
思い描いていた、未来と違っていた。
愛すれば人を傷つけ、愛されることにおびえた。
窓の外の月と夜空が、この世のものとは思えないほど、美しかった。
ギターの弦を幾重にも重ねて、首に巻いた。
「もう、終わりだ。ここで、これで、おしまい」
体から力が抜け、宙ぶらりんになる。
窓から見える月が、手をふるように揺れている。
「終わりだ」
声にならぬ声を出し、月の光がぶれた残像となる。

「ほう」
狐の審査員が、興味深そうに目を細めた。
「いやいや暗い暗い。もっと明るくいかなきゃ」
犬の審査員がそう言って、目の前に石を置いた。
黒い石だ。
「みじめだな」
豚の審査員も、黒い石を取り出して、目の前に置いた。
「ぼくんとこも無理かな」
猫の審査員も、すこし迷ってから、黒い石を置いた。
馬の審査員は腕組んで黙っている。
一様に、あまり評価はされていないようだ。
あせったあなたは、もう一度やり直させてくれるように、頼んだ。

進行役の女が出てきて、審査員たちの様子をうかがった。
「特別ですよ」
ありがたい。
どうやらチャレンジさせてくれるらしい。
「それなら、もう一度みてから、判断しなおそう」
と、猫の審査員だけ、黒い石を手元に引き寄せ、とりのぞいた。

さて、あなたはこの台詞をどのように演じよう?

恋人への別れの言葉として4へ
計画が破綻し、うなだれた悪役として26へ
とどめの一撃を加える正義の味方として32へ

 

 

 

 

 

50

馬の審査員は、避けもしなかった。
縦回転で投げたおもちゃの剣は、馬の審査員のはるか頭上に飛んでいった。
しまった! これでもう終わりだ。
その場にいた全員が、そう思ったときだ。
おもちゃの剣は天井にあたると、まっすぐ馬の審査員の紙風船の上に落ちてきた。

「おお」
審査席から歓声があがる。
「偶然か? 作戦か?」
豚の審査員が狐の審査員をみる。
「さあ」
と、狐の審査員は両手を掲げてみせる。
馬の審査員は、自分の負けが信じられない様子で、ぼうぜんとぺちゃんこになった紙風船を見つめている。
進行役の女にうながされると、うなだれて自分の席に戻っていった。
「ずいぶん自信たっぷりだったのにな」
猫の審査員は、笑いをこらえながら、馬の審査員に声をかける。

「これで、あなたの審査はすべて終了です」
場が落ち着くと、進行役の女がそう告げた。35へ

 

 

 

 

51

 

馬の審査員が、黙って立ち上がり、前に出た。
進行役の女が、紙風船をふたりの頭にとりつけ、おもちゃの剣をわたした。
馬の審査員は身長が高く、進行役の女はそのために脚立を用意した。
「おれを選んだ時点で、失敗だ」
馬の審査員にとって、おもちゃの剣は短すぎて、とても武器にはみえない。

進行役の女が、ホイッスルを鳴らした。
試合開始だ。

馬の審査員は、構えもとらずに立ちはだかっている。
正面から、紙風船をねらう37へ
横に回って、紙風船をねらう54へ

 

 

 

 

 

52

「愛とは、情熱にまかせた熱病のようなものだ」
あなたの答えに、犬の審査員が腕を組んでうつむいた。
「面白くないなあ」
「しかし、真理ではある」
豚の審査員が甲高い声でそういうと、馬の審査員も、
「そのとおり」
と、力強くうなずく。
そんな二人を横目に、犬の審査員は、どこからともなく黒い石を取り出して、自分の目の前に置いた。
「興味ぶかい答えですなあ」
場の空気を和ますように、狐の審査員がそう言った。

「審査員のみなさま、次の課題へ移ってもよろしいでしょうか?」
いつのまにか、進行役の女が、前に出てきている。

「ひとつ聞きたい」
猫の審査員がひげをいじりながら、質問を投げかける。
「きみは、ひとつのことを集中して、実行したいか? それともいろいろなことにチャレンジして、自分の幅を広げたいか?」
どのような、演技をしていきたいか、ということだろうか?

「ひとつのことに集中したい」10へ
「チャレンジして、自分の幅を広げたい」45へ

 

 

 

 

 

 

53

「次は、歌の審査になります」
あなたはギターを持参していた。
進行役の女が、あなたの前に、スタンドマイクと譜面台を準備する。
「曲は?」
犬の審査員がたずねた。
「『REAL HAERT』」
あなたに代わって、進行役の女が答える。
「聞いたことないな」
「ぼくもないな。音楽には詳しい方だが」
豚の審査員や猫の審査員の疑問に、女は笑顔で対応する。
「この方のオリジナルです。かつて、マスカレードというバンドで作詞作曲、ボーカルとギターをしていました。そのバンドの、一番人気の曲だそうですよ」
「ほう、それは楽しみですねえ」
狐の審査員は、興味がわいたようだ。
「すばらしいことです」
そのように言われて、あなたは赤面しそうになった。
進行役の女の口調に嫌味ではないが、それがかえって居心地を悪くした。
たしかにバンドをしていたが、しょせんは学生時代の、遊びの延長だ。
本気でプロを目指していたわけではない。
「どんなジャンルだい? フォーク? ロック? それともポップス?」
猫の審査員がいろいろ聞きたがったが、馬の審査員がさえぎった。
「まあ、聴けばわかるさ。黙って聴こうじゃないか」

審査員たちが静まり返ると、あなたは、弦を押さえて、弾き始める。
前奏が入り、Aメロから歌う。

力強く歌う23へ
やさしく穏やかに歌う56へ

 

 

 

 

 

54

あなたは横に動いて、馬の審査員の頭を狙った。
馬の審査員は、あなたの動きには、まったく反応しなかった。
しかし、正面を向いたままで、まるで横に目でもついているかのように、手だけでかるく攻撃をさばいた。
そのままうしろまで回り込む58へ
いったん下がって、スキができるのを待つ28へ

 

 

 

 

 

55

あなたは、弦を力強く叩いて、声量を増した。
心に浮かんだ過去の映像を壊すように、ギターを早く、かき鳴らす。

 いのちのじかん きざむ
 とけいのはりの おと
 あせりを こどうへと 
 つなげる REAL HEART
 
そして、曲はサビへと突入する。
力強く激しく歌う59へ
伸びやかに歌う40へ

 

 

 

 

 

56

あなたは、自分の気持ちを落ち着かせるように、しっとりと唄いだす。

 まだ みぬせかい
 きたいや ふあん
 ありもしない あくむをみて

歌いながら、いままでの葛藤や悩みが、不思議と思い出された。

 やせたからだ なやむこころ
 まだ みぬせかい
 こわれるせかい

愛や、家族や、友人との確執が鮮明に浮かび、歌に感情が入る。
曲は、Bメロに入る。

そのまま優しく歌う3へ
ここで力強く歌う18へ

 

 

 

 

 

57

あなたは、別室へ通された。
審査員の控え室だった。
机の上に、馬のかぶりものが置かれ、窓際にスーツがかけられている。

部屋の中央に、赤い肌の鬼がいた。
長い牙と、二本の角。
巨漢で、腕や足の筋肉が彫刻のように隆起していた。
馬の審査員だったものは、あなたを睨みつけると、
「いくぞ」
と、腕を引っ張った。
その腕力にあがらえるわけもなく、あなたは引かれるままついていく。
どういうことなのか、どこへ向かっているのかと質問しても、鬼は無言だった。
それでも、あなたがしつこくしていると、
「うるさい奴め」
とつぶやいて、説明をし始めた。
「おれは善良ではないと思われる霊魂を管理するのが、仕事だ」
自殺した魂の中でも、特に良識に欠けていたり、いつまでもどこにもいけない魂を間引くのが、かれの仕事らしい。
霊を囲う農場のようなところがあり、そこで厳格に管理するのだという。
「少しはまともになるように調教するのが目的だが、そうなるものはほとんどいない」
鬼の表情は、怒りで固定されているようにみえるが、その本心はかいまみれない。
「おまえは、おれの目から見て、調教が必要だった」
調教とは、なにをされるんだ?とたずねると鬼は足を止めて、あなたを見た。
「本当に知りたいか?」
あなたがうなずくと、鬼は小声であなたに耳打ちした。
とたん、あなたの顔は青ざめた。
そして、逃げようと暴れまわった。
しかし、鬼の腕は逃がさない。
泣いて懺悔をし、許しを懇願した。
鬼は、聞く耳を持たない。

やがて、あなたたちは、鬼のいう農場のようなところについた。
針の柵に覆われ、血の池、串刺しの丘、火あぶりの広場が眼に入った。
「ついたぞ」
たくさんの鬼が、泣き叫ぶ魂に非道な仕打ちをしていた。
俗にいう、地獄だ。

HORSE END

 

 

 

 

 

58

馬の審査員のうしろへ回りこんだ。
やはり、馬の審査員は、動かない。
チャンスとばかりに、あなたは頭上めがけて、飛び上がろうとした。
すると、馬の審査員は蹴りを入れるように、低く足をかかげた。
すばやく、なめらかな、熟練した技だ。
顔は正面を向いたままなのに、確実につま先は標的であるあなたの額をとらえている。
あなたは動きを止め、あとずさりをした。

「もっと、正面からぶつかってほしいぞ」
審査席で、犬の審査員はそうつぶやくと、黒い石を置いた。
「もっと、頭を使ってほしいねえ」
狐の審査員は、そうこぼした。
「まだ途中じゃないか。といっても、馬の審査員が相手では、勝ち目はなさそうだな」
豚の審査員もあなたの動きには、期待していない様子だ。

じっと待って、スキができるのを待つ28へ
もう一度動き回る27へ

 

 

 

 

 

 

59

ギターのシャッフルは、さらに激しくなる。
あなたは、自分自身を鼓舞するように、サビを歌った。

 だれだって じかんのなみに のまれながら
 あともどりしようと ひっしにもがいてる
 だれだって はげしいいかり かんじながら
 いきるエネルギーにしている

演奏が終わった。
歌い終わると、部屋が演奏の余韻で静まりかえった。
審査員たちから、拍手が贈られた。
「ノリがいいねえ」
「おれもいいと思う」
犬の審査員と猫の審査員は評価してくれた。
「やかましすぎますよ」
そう言って、狐の審査員は、黒い石を、目の前に置いた。
進行役の女が、マイクと譜面台を片付けた。
歌の審査はこれで、終了のようだ。44へ

 

 

 

 

 

60

あなたが動くと、猫の審査員はすばやく横へ動いた。
あなたが横へ切り返すと、猫の審査員はもういない。
うしろにまで回り込んでいる。
「あははは。そんなものかい?」
やられる、と思いながら振り向くと、猫の審査員は後方にまで下がっていた。
「もっと、試合を楽しもうか」
もう一度正面からたたきにいく48へ
足元を狙ってみる22へ
こちらも相手の出方をうかがう63へ

 

 

 

 

 

61

あなたは、別室へ通された。
「来てくれましたね」
審査員の控え室だった。
机の上に、狐のかぶりものが置かれ、窓際にしわひとつないスーツがかけられている。

部屋の中央に、白衣の黒人がいた。
眼鏡をかけ、頭髪はない。
「わたしは、ルイ」
狐の審査員だった男は自己紹介をはじめた。
ルイは科学者だった。
高濃度プラズマの専門だったが、実験の偶然で、霊界の存在を知ってしまったそうだ。
「霊の存在を知ってから、俗世間の名声とかに興味がなくなってしまってねえ。しかし、科学者としての探究心はあるものだから、こうやって研究を続けているんだ」
実験のために、あなたをもう一度、生き返らせてくれるらしい。
ただし、すべて前世の記憶を失って。
「そのとき、人がどういう行動をとるのか興味があるんだ」
肉体の記憶と魂と記憶との関係、境界、もし以前の知り合いに出会ったら、どのような反応をしめすのか。
ルイは、話の内容があなたには難しいと思ったのか、途中で咳払いをし、にっこりとした。
「こう言ってはなんだが、ごく普通の魂を選んだつもりだ。たまにわたしが検査、モニターをするが、それ以外は、普通に人生を歩んでもらっていい」
あなたは心から喜んだ。
死ぬ前に心残りだった、恋人や家族や、友人にまためぐり合うチャンスをもらったのだ!
「ただし」
ルイは、ぬか喜びをしているあなたに、意味ありげに一言加えた。
「次の人生では、もう、自殺なんかするんじゃないぞ」

FOX END

 

 

 

 

 

62

あなたは、別室へ通された。
「おお、よく来た」
審査員の控え室だった。
机の上に、豚のかぶりものが置かれ、窓際にスーツがかけられている。

部屋には、柔和な笑顔の白髪の老人がいた。
痩せた体つきだったが、甲高い声で豚の審査員だったとわかった。
「すぐに出発する」
老人は、エプロンにコック帽をかぶっていた。
あなたを車に案内し、鉄格子で覆われた荷台に乗せた。
自分で運転し、鉄格子越しに、あなたに説明を始める。
「わたしは暗黒の君主に使えるものだ。かれ専任の料理人をしている」
暗黒の君主とはなにものか、あなたがと尋ねたら、
「偉大で、名状しがたき姿をしており、夢とうつつの狭間を支配するお方だよ」
と、老人は答えた。
「そして、人の魂を好んで食する」
老人は続けた。
「愛や波乱や、激動に満ちた人生をおくった魂が特にお好きでね。こうやってわたしが、新鮮な食材を調達しているんだよ」
あなたは、鉄格子をゆさぶったが、びくともしない。
逃がしてくれと、大声で叫ぶ。
「こう考えたまえ」
車は、薄暗い闇を走ってる。
景色はない。
「きみは、崇高なる我が主の朝食に選ばれたんだ。それは、たいへん光栄なことなんだ、とね!」

前方の空には、蜘蛛の巣のような稲妻が無数に走っていた。
稲光に照らされて、山のような影が、身震いするように蠢いた。

PIG END

 

 

 

 

 

63

あなたが待ち受けていると、
「どうした? 来ないのかい? こっちから行こうか?」
猫の審査員は、挑発をするように、跳ねる高さを上げる。
人とは思えない、跳躍力で、本気で跳べば、天井を越えるにちがいない。
このまま待っていても、あなたの紙風船など簡単に一叩きされてしまうだろう。

あなたは、こちらから攻撃しなくてはならない。
頭を叩きにいく60へ
足元を狙ってみる22へ

 

 

 

 

 

64

あなたが横に回って、突進をかわすと、犬の審査員は急には止まれない様子で、前につんのめった。
うしろ姿がスキだらけに見える。よく見ると、おしりのところから尻尾がはえている。
紙風船を叩き割る31へ
様子を見る41へ

 

 

 

 

 

65

 

そこで、目が覚めた。

ああ……

夢か。

 

REAL END