一大叙事詩とも言える大長編ゲームブック。
剣と魔法が支配する“高ツ原五国”を舞台にした王道ファンタジーだが、そんなありきたりな表現で終わらせてはいけない破天荒な問題作。これまでインディーズで数十作品のゲームブックを書き上げてきた21世紀のゲームブック作家の一翼たる筆者が、構想10年、執筆に丸2年をかけて完成させた会心の一本をひっさげ、幻想迷宮書店に殴り込みをかけた。
読者であるあなたは、何の力もない一介の文官ライゼ=インカルナの目を通して、人間なら誰でも持つであろう感情をもとに当たり前に行動する主人公に共感し、場合によってはあまりにも身の丈に合わない世界の危機に直面することになる。
幸運にも、物語の深淵に到達することができたなら、あなたは通常のゲームブックではありえないほどの深い没入感を体感できるだろう。
“ナンバーレスパラグラフ”、“シームレスフラグシステム”など数々の新しい試みにも、筆者の溢れんばかりの創造性とオリジナリティをまざまざと見せつけられる。シンプルながら丁寧に練り込まれた設定の積み重ねが感じさせる世界観の奥行き。何百万字と綴ってきた筆力が紡ぎだす深みのあるキャラクターたち。研鑽を積んだゲームブック職人としての技術と、小説家としての描写力の融合を、高い次元で表現してみせた筆者のゲームブック作家としての集大成を味わい尽くしてほしい。 |