Overview作品概要

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ゲームブック SAIKAI
ゲームブック SAIKAI
媒体 Kindle
作者1 Sゲームブッカー
作者2
出版社
ジャンル
パラグラフ数 560
必要なもの 紙と鉛筆、サイコロ1つ
書評・感想
概要
560パラグラフゲームブック、鉛筆画の挿絵8点。紙と筆記用具、選択によってはサイコロ1個必要です。
2010年7月に小説投稿サイトで初期版を公開。好評を得まして、大幅に加筆修正した唯一の長編になります。主人公はとある理由で体外離脱(幽体離脱)して、奇妙な異世界の町を探索します。能力値やサイコロ戦闘などはなく、フラグチェックとマッピングをしながらプレイ。クリア後の達成感はかなりあり、真の結末に辿り着くには試行錯誤が必要になるでしょう。コンセプトは、プレイするたびに新しい発見がある、多彩なフラグの使い方、最も感動するゲームブック、体外離脱シミュレーター。

 未希を誰よりも愛していた。初めての彼女だった。雪の降る道で、未希が足をくじいてうずくまっていたところを真っ先に駆け寄り、「大丈夫?」と声をかけたのがきっかけだ。未希の初々しいセーラー服姿に長い黒髪、大きくて潤んだ瞳に胸がときめいた。それは忘れもしない、去年の12月20日の出来事だった。そして俺たちは25日のクリスマスに付き合い始め、そろそろ1年が経とうとしていた。記念日には2人でどこか旅行にでも行こうと話していた時だった。
 未希と出会ってちょうど1年、記念日まであと数日という12月20日の朝、未希は女子高の登校中に突然飛び出してきた車にはねられてしまう。すぐに近くの病院へ運ばれたが、打ち所が悪かったらしく助からなかった。未希のお母さんから涙声で電話があり、病室に無我夢中で駆けつけた時、未希は顔に白布をかけられてベッドに横たわっていた。俺は信じられないという気持ちで未希に歩み寄り、両膝をついてそっと白布をめくった。その手は絶望で震えていたのを覚えている。未希の色白で愛らしい顔には傷ひとつなく、それがせめてもの救いだった……。

 ひとまずアパートに戻っても何もする気になれず、未希から誕生日に貰った手編みのセーターを抱き締めて、部屋の片隅に座り込んでずっと泣いていた。
 泣き腫らした顔を上げ、壁の時計を見る。夜の7時が少し過ぎている。10時間も泣いていたのか。さすがに泣き疲れて、気晴らしにテレビをつける。体外離脱の特集番組をやっている。体外離脱を経験したという女性が、亡くなった祖母に会って話をしたと真剣な表情で語る。
 これだ!
 思わず画面に釘付けになる。
 意識が肉体を離れて空を飛べたり、遠く離れた土地を訪れることもできるという体外離脱に興味を持ち、本などを読んで何度か試したりしていたが、今まで1度も成功したことはなかった。
 番組内で簡単な離脱法が紹介される。これならいけるかもしれないと思えた。未希は今、どんな気持ちでいるのか知りたい。どうしても再び会って話がしたかった。
 着ていた服を脱ぎ、さっそくパジャマに着替える。 その上に未希の手編みのセーターも着る。離脱成功への力を貰えそうな、そんな気がしたからだ。カーテンを閉め、部屋の明かり、それからテレビも消す。ベッドに仰向けに寝て、両腕は体から少し離し、手のひらを上に向ける。ヨガの休息のポーズというやつだ。ゆっくり深呼吸しながら全身の筋肉を脱力させ、肉体の感覚がなくなるまでリラックスさせる。
 眠りに落ちそうになるのを堪え、まどろみ状態を維持し続けていると、徐々に体が細かく振動し始めた! これは初めての体験だった。体は金縛り状態になっているようで、思うように動かすことができない。その状態のまましばらく耐えていると、闇の中にぼんやりと未希の顔が浮かんできた! 微笑んでいるようにも、悲しそうな表情をしているようにも見える。少しの間俺と未希は見つめ合っていたが、徐々に未希の顔が遠ざかり始めた。
 待ってくれ!
 心の中でそう叫び、動かない右腕を感覚的に伸ばす。未希の顔が徐々に闇の中へと消えてゆく。懸命に右腕を伸ばし続けていた時、ずるりと体と体が離れる感覚がした!
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