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ゲームブック 防空壕の奥深くには
ゲームブック 防空壕の奥深くには
媒体 Kindle
作者1 Sゲームブッカー
作者2
出版社
ジャンル
パラグラフ数 132
必要なもの
書評・感想
概要
132パラグラフゲームブック。表紙画を使用した挿絵1点。紙と筆記用具が必要です。何が待ち受けているのでしょうか。

 僕の家の近くには裏山があって、そこには洞窟のような横穴が開いているんだ。どうやら戦時中に空襲から逃れるために使われていた防空壕というものらしいんだけど、いつも少しだけ中に入って、それ以上は怖くて、奥がどうなっているのか確かめられずにいた。
 防空壕のことを忘れかけていた昨日の土曜日の昼過ぎのこと。僕の家に同じクラスの友達4人がゲームソフトを1本ずつ持って遊びに来た。みんなで騒ぎながらしばらくゲームをプレイしていた時、1人の友達がこんなことを言った。
「なあ、ここの近くに昔使われてた防空壕があるじゃん。俺が持ってきたこの戦争ゲームを1人ずつやってさ、スコアが最低だったやつがその防空壕の1番奥に要らない物を置いてきて、その場所を記した防空壕内の地図も確かに入った証拠として完成させるっていうのしないか?」
 僕の家にくる前から考えていたようにスラスラと。オリジナルのスゴロクゲームとかをよく作ってはクラスの男女に遊ばせ、好評を得ていたゲーム作りの得意なやつだったから、考え出しそうなことではあった。
 他の友達はゲームそっちのけで、肝試しみたいだな、やろうぜ、なんて言って盛り上がり、僕の答えを待っている様子。僕はゲーム機はいろんな種類のやつを持っていて、ゲームも得意な方だから、絶対俺が最高スコアだよ、みんなごめんな、そう自信たっぷりに僕は言った。
「じゃあ、明日決行して、月曜日に完成した地図と、学校帰りに置いた物がちゃんとそこにあるかみんなで確認に行こうぜ。それぞれランドセルに懐中電灯を入れてくるのを忘れるなよ」
 僕はそこまで考えていたことに感心してしまった。そのうちこの友達にゲーム作りを教えてもらおうか、とまで思ったぐらいだ。
 それぞれ1人ずつゲームオーバーになるまで戦争ゲームをプレイした。そのゲームには防空壕らしきものは登場しないらしかったけど、その外ではこんなことが行われていたのかと思うと、銃を楽しげに撃ちまくっている友達を見ていると少し怖くなった。僕は最後にプレイすることになり、今のところは防空壕に入り、要らない物を置いてくるゲームを考えた友達が最高スコアだった。
 少しドキドキしながら友達のプレイする画面を見つめていると、いよいよ僕の番が回ってきた。最低スコアも最高と1000点ちょっとしか変わらないという接戦だった。みんなゲームが好きで上手い方だとはいえ、それだけではない何かがある気がした。みんな何が置きっぱなしになっているかわからない防空壕にはやっぱり入りたくはないんだと思った。そう、みんなゲームを楽しみながらも必死だったんだ、と。
 コントローラーがいつもよりやけに汗ばんでいるのに少し驚きながら、僕は必死になって敵兵を撃ちまくった。プレイを始めると、スコアが最低になってしまった時の緊張感が薄れてくることに気づく。非日常を画面いっぱいに堪能できるTVゲームはやっぱり楽しい。夢中になって敵兵を撃ちまくり、戦車の砲弾を鮮やかにかわした時だった。突然目の前に防空頭巾を被り、赤ちゃんを抱えた若い女性が僕の操る兵士の前に駆け出してきたんだ。そう、民間人だった。その女性の表情は画面からでも怯えているのがわかった。いや、そう見えただけかもしれない。とにかく一瞬の出来事で、次の瞬間には音もなく背後に集まっていた敵兵たちの一斉射撃を背中に浴び、僕の操る兵士はあっけなく地面に這いつくばった。ゲームオーバー、そこでゲームは終了だった。
 僕は真っ先に自分のスコアを確認した。……スコアは、これまでの最低に数百点及ばないものだった。みんな僕が辿り着いた場所よりも先に行っていたから当然だ。けれど、あの女性の民間人を見たのは僕がプレイした時だけだった。こうして僕が防空壕に入ることになったんだ。
 僕はみんなの帰り際にいつもの癖で、地図を完成させて1番奥に置いてくるから待ってろよ、なんてできるかどうかわからないことを自信たっぷりに言ってしまった。

 次の日の昼食後、置いてくる物は学校帰りに拾った名前のわからない黄色い消しゴム人形に決めた。そいつをズボンの左側のポケットに入れ、右側のポケットには地図を描くためのメモ帳を鉛筆を挟んで入れる。それ以外には、中は暗くて明かりなんかないに違いない防空壕内の探索には絶対に必要な懐中電灯を左手に持った、電池切れが怖いから電池は新品と交換して。それと、右手に何かもう1つ持っていけるけど、何がいいだろう。
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